碓井サテライトクリニック
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肛門の手術の特殊性
 肛門の仕組みで述べましたが,肛門は便を漏らさないとても大切な機能があります.そのため,肛門の手術に際しては痔の治療をしながら肛門の機能を損なわないように注意する必要があります.痔は治ったが,肛門はだめになったというのでは意味がありません.
 癌の手術では,命を守るために機能を犠牲にすることがあります.例えば,肛門にできた癌では,命を救うために肛門を切除して,人工肛門をつくります.そのため,人工肛門から便が出てきますので,それを受け止める袋(パウチと言います)が必要なのです.人工肛門の患者様は,そのパウチの管理が必要になります.臭いが漏れないようにしたり,便でかぶれるのを防いだりと大変です.最近は,パウチの品質が向上して,患者様の悩みが少なくなってきますが,本来なら肛門があった方が良いのです.
 肛門は無くしてはじめて分かる大切な臓器です.肛門を可愛がって下さい.
 肛門の手術は歯の治療を例にすると分かりやすいと思います.虫歯の治療では,虫歯の歯だけ治療します.将来,虫歯になるのを予防するために総入れ歯にする方はいないと思います.それに,虫歯の治療がすんだからといって,歯磨きを怠るとまた虫歯になります.肛門の手術でも同様で,便通を悪くしたり,トイレで長くイキんだりしていると今悪くない所が膨れてくることもあります.肛門は大切にしてあげましょう.

 以前,究極?の手術が肛門の手術で行われていました.つまり,肛門を全周にわたってグルリと切除する方法です.歯の治療に例えると,虫歯の治療で総入れ歯(二度と虫歯にはなりませんが,硬いものが噛めないなど不自由です)にするようなものです.
 肛門を取ってしまうのですから,二度と痔核にはならないという発想からでした.発想は良く,術後しばらくは調子が良いので,世界中で行われたのです.しかし,術後数年後から,手術した患者さんがかなりの頻度で病院に戻ってきたのです.便が漏れる,下着が汚れる.直腸が出てくるなど具合が悪いと訴えて.そして,今ではその術式はやってはいけない術式になっています.その術式名はホワイトヘッド(人の名前)手術といい,その手術によって引き起こされた後遺症をホワイトヘッド肛門という不名誉な名称がついています.
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