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白壁彦夫教授の思いで
世界的に有名な白壁彦夫教授が退官前にご自身の過去の話をよくされました.出前の焼き鳥とお酒を飲みながら,聞いたお話や怒鳴られた事を思い出しながら,鎮魂の意味も兼ねて,思い出すままに箇条書きに書いてみます. |
- 海外の学会では,ばかにされないために学会場の最高のホテルの最高の部屋を無理をしてでも予約したと.招待されても自分でその分を負担したそうです.
- 海外に学会で出るようになったが,若い頃は英語がよく理解できず,空港のアナウンスがあるたびに搭乗口に行き,チケットをみせて,違うと言われまた席に戻り,待っていた事があったと.場慣れして来るに連れ,英語で会話できるようになったと.
- 海外での講演では,内容が優れていれば,英語が達者でなくても,先方が必死になって聞いてくれるものだと.
- 海外に講演に行って,観光はしたことがないと.なにをしているのですかと聞くと,文房具屋さんに入り浸っていると.(退任前に,形見分けと称され,多くの文具類を頂きました)
- レントゲンの二重造影法が海外で認められているにもかかわらず,国内での理解が得られず,ヤケ酒を飲む日々が続いた事もあったと.
- 千葉大学の医局に入局した時に,名簿をみて医局員が150人いるのを知り,これからどうやって上り詰めようかと思案したと.
- 千葉大時代にレントゲンの二重造影法を確立して,腸結核の診断に自信を持っていた時に,体重減少の患者がいて,当時の教授がこの患者は問診や触診などで腸結核だろうと診断.白壁先生はレントゲン検査の結果では腸結核はないと診断し,教授回診で意見の対立があったそうです.教授は「君の診断は信用できない,結核でないのならどうしてこんなに痩せてるのだ」とせまったそうです.そこで白壁先生は毎日その患者の食事に同席して,食事を介助してあげて,みごと体重を増やし,ご自信の診断が正しかったことを証明されたそうです.
- よく怒鳴られた事で,「おまえの一生懸命とは,どの程度のものか」,「昨日は何時間寝たのか」,「寝る時間はちゃんと取って,一生懸命とはなんだ」と.
- 医学の論文を読んで,その内容を発表した時に,質問されたのは,「著者は何人で,何大学の人か」と.その意味する所は,その著者の他の論文をちゃんと検討しているかという事を確認されていました.つまり,その人の背景をよく知らないと,論文に読まれてしまうと.適当な論文を書いている人の論文を金科玉条の様に話すと,みっともないぞと.
- 文藝春秋を読みなさい.一番,日本語がきれいだからと.
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