碓井サテライトクリニック
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ペニシリン発見の物語
偉大な発見は,誰にもできるのですが,プラスαがないといけません.
参考文献は,医学を変えた発見の物語

1929年 フレミング ペニシリンの発見を報告
1940年 チェイン&フロレーイン ペニシリンの化学療法の効果を報告
1945年 上記3名にノーベル賞

フレミングは,ある日培養皿の上に窓から風が吹き込むと同時に,ペニシリウムカビが流れ込んできて,カビのために細菌が死滅しているのに気づいた.(この現象は,1877年にチィンダルも観察していたのだが・・・)

彼は,カビには何千種類もあり,細菌も何千種類もあり,たまたま偶然にそのカビが細菌を死滅した事自体が宝くじに当たったようだと述べている.

その後の研究で「ペニシリンはいままで知られている色々な消毒薬よりもすぐれた性質があるように思われる.消毒効果は石炭酸よりも強力であり,しかも組織を刺激したり,毒性を発揮したりすることがないので,直接感染組織表面に塗ることも可能である」さらに「ペニシリンは細菌学者たちが,不要な細菌が培地に生えてくるのを防ぐのに用いるのにも有効であろう」とまで述べている.

フレミングは,マウス(病気でない)に投与して,副作用がないという事まで確認していたのに,細菌感染症を起こしたマウスに投与して,効果をみるという実験はしなかった.つまり,フレミングはペニシリンが動物や人の細菌感染に有効であると証明していないし,精製もしなかったのです.良い消毒薬になるだろうとしか思っていなかったからです.フレミングはあと一歩の所で足踏みを止めたのです.

細菌感染に有効であるという報告は,チェイン&フロレーインの登場を待たねばならなかった.しかし,この2名は当初,薬としての「抗生物質」をつくろうという気は全くなかった.科学上の興味からであった.

 なぜ,フレミングは細菌感染に対する効果を調べなかったのか?

 フレミングの所属していたトップが,細菌感染症に対する治療は免疫療法しかない,化学療法を用いて細菌感染を治療しようとすれば,絶対に成功しないと主張していた.つまり,化学療法は必ず感染細菌よりもその宿主の方に害が強いという主張を持っていた状況があった.そして,フレミング自身もそう考えていたからである.実際に,その頃の化学療法は失敗していたし,ペニシリンは不安定で,もしタンパク質であったなら,アナフィラキシーを起こすので実用化はできないだとうと考えられていたからです.

 柔軟な思考を持つことが必要ですね.

1938年にチェイン博士はイギリスの研究機補助団体に,上記の研究の助成金の申し込みをしたが,却下されている.カビみたいな中世の話みたいなのが,細菌感染症の治療に有効であるはずがないという理由で.しかし,アメリカのロックフェラー財団からは補助を受け,上記の業績を出し,ノーベル賞を貰ったのだが.

 チェイン博士らも幸運があった.実験にマウスを使用したことなど.ペニシリンはマウスには毒性がないが,モルモットには毒性があった.他に,精製したつもりで99%は不純物であったが,この不純物に毒性がなかったこと.
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